コラム(詳細)

第79回「経済合理性」

2010.11/23

経済レポート2330号[平成22年11月23日]掲載

  1. はじめに

    併合することや分割することを前提とする取引があります。「隣地は倍出してでも買え」という言葉がありますが、これは隣接地を併合して一体となることによるメリットを強調したものです。また、借地権者が、借地をしている土地(底地)を購入する場合にも、借地権が消滅して完全所有権に復帰することから、借地権が付いたまま第三者に売却する評価より高額となることがあります。

    この様に特定の当事者間においてのみ経済合理性が認められる(特定の当事者間においてのみ妥当する)評価が行われる局面があります。

  2. 隣地の併合を目的とする売買

    • A地単独の評価額…32,000千円
    • B地単独の評価額…10,000千円
    • A地とB地を一体…50,000千円

    としてみた場合の評価額
    B地の評価額は単独としてみた場合10,000千円ですが、A地の所有者がB地を購入することを前提として考えれば、50,000千円-32,000千円=18,000千円までは経済合理性が成り立ちます。(18,000千円までであれば購入しても損はありません)。

    また、見方を変えれば、A地とB地が一体となることによって、50,000千円-(32,000千円+10,000千円)=8,000千円の増分価値が生じることとなります。

  3. 経済合理性に反する分割

    • B地単独の評価額…10,000千円
    • C地単独の評価額…7,000千円
    • B地とC地を一体…20,000千円

    としてみた場合の評価額

    B地とC地は現状1つの土地であるとして、分割してA地の所有者がB地のみを購入するとします。この場合B地とC地の所有者側からみれば、分割することによって20,000千円-(10,000千円+7,000千円)=3,000千円の価値の減少が生じることとなります。本件では、補償的意味あいから、B地の単独の評価額10,000千円に減少分の3,000千円を加算したものが1つの判断基準となります。

以上