第85回「収益還元法(その1)」
2011.05/31
経済レポート2354号[平成23年5月31日]掲載
- はじめに
「地価は下がることはない!」といういわゆる土地神話の崩壊後、取引事例一辺倒の評価から収益還元法の重視がいわれて久しい。先般の不動産価格の高騰期には、「収益還元法に基づく評価に裏打ちされており決してバブルではない」という論調も一部にはありました。しかしながら、サブプライムローン問題に端を発した外資系ファンドの撤退を主要因に脆くもはじけました。
今回からシリーズで、この収益還元法という評価手法そのものについて少し掘り下げてみたいと思います。
- 収益還元法の定義
収益還元法とは、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法です。そして、この手法による試算価格を収益価格といいます。
- 収益還元法の位置づけ(立ち位置)
そもそも物の価格を判断する場合、次の3つの尺度を考慮することが通例であるとされています。これがいわゆる価格の3面性といわれるものです。
①その物ができるのにどれほど費用がかかったか(費用性、原価性)?
②その物と類似のものがいくらで市場で取引されているか、他人はどのように評価しているか(市場性、比較性)?
③その物からどれほどの収益(又は便益)を得られるか(利便性、収益性)?
不動産評価の場合も同様であり、上記の①~③に応じて、それぞれの考え方を反映した評価手法があり、基本的にはこの3つの評価手法によって求められた価格(試算価格といいます)を、総合的に考慮して、最終的な評価額の決定に至ることとなります。
- 最後に
収益還元法は、収益性を前提とする不動産(賃貸用や事業用)を評価する場合特に有効とされています。そもそも収益性は経済価値の本質を形成するものであり、土地神話の崩壊後は、収益性重視の考え方が高まっているのが一般的傾向です。手法そのものについてもバリエーションの多様化、精緻化が日々進んでいます。
以上