コラム(詳細)

第86回「収益還元法(その2)」

2011.06/28

経済レポート2358号[平成23年6月28日]掲載

  1. はじめに

    前回、収益還元法の定義等についてとりあげました。「収益還元法は3つの評価手法のうちの1つで、文字どおり収益性に着目した手法であり、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格(この手法による試算価格を収益価格といいます)を求める手法である。」ということでした。

    ただ、収益還元法には、様々なバリエーションがあり、今回は「更地価格(土地価格のみ)」を求める場合と「土地と建物価格」を求める場合についてとりあげます。

  2. 土地と建物の収益価格を求める場合

    土地と建物の収益価格を求める場合、土地と建物があげる純収益(テナントビルであれば賃収等の総収益から総費用を控除したもの)の現在価値を求めることとなります。現に土地と建物があげている収益がベースとなることから、比較的理解しやすいと思います。

    具体的な査定の方法としては、直接還元法とDCF法があるのですが、直接還元法を式で表せば次式のとおりとなります(これらの手法の詳細は次回以降にとりあげます)。

    直接還元法

  3. 更地(土地価格のみ)の収益価格を求める場合

    では、対象不動産が更地(建物が建っていない土地)の場合は、どうでしょうか?この場合には、当該土地に最有効使用の賃貸用建物等の建築を想定して収益還元法を適用します。この方法のことを「土地残余法」といい、この方法は地価公示価格等の査定においても採用されています。詳細は割愛しますが、①更地に賃貸用建物を建築し→②同建物を賃貸し→③建物の経済的耐用年数満了時に取り壊して更地化するという①から③までを一ライフサイクルとしてとらまえ、このライフサイクルを繰り返すことを想定して求めます。

  4. 最後に

    この様に「更地の場合」と「土地と建物の場合」とでは具体の手法の適用の使方や前提等が大きく異なります。ひとくちに収益還元法といっても一様ではありません。次回からはいよいよ分類・算式についてとりあげます。

以上