第88回「収益還元法(その4)」
2011.08/30
経済レポート2366号[平成23年8月30日]掲載
- はじめに
収益還元法シリーズの4回目です。収益還元法は基本的には「直接還元法」と「DCF法」の2つに大別されますが、今回はこのうち直接還元法について少し掘り下げてとりあげます。
- 直接還元法(永久還元)
直接還元法(永久還元)は、一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法であり、次式によって表されます。
一期間とは通常1年間であり、現にあげている純収益(初年度純収益)を基礎にする場合と中長期的にみて安定的な平年度の純収益を想定しこれを基礎とするパターンがあります。当然ながら採用パターンに応じて還元利回りは異なる水準となります。
仮に1年間の純収益が1千万円で還元利回りを7%とすると、収益価格は1千万円÷7%でおよそ1億4千3百万円と求められます。では、還元利回りが6%の場合はどうでしょか?収益価格は1千万円÷6%でおよそ1億6千7百万円です。利回りが低くなるほど土地建物の価格は高くなり、利回り1%の違いで約17%も価格が上昇することがわかります。
- 直接還元法(有期還元)
以上が永久還元の方法ですが、例えば、建物が老朽化している場合や契約等によって収益期間が限られている場合には、収益が得られる期間に対応して純収益を有期で還元する方法が用いられる場合があります。
また、期間満了時に土地又は建物等の残存価格や建物等の撤去費が予想されるときには、これらを現在価値に換算した額を加減する方法(インウッド式)や複利年金現価率の代わりに畜積利回り等を基礎とした償還基金率と割引率とを用いる方法(ホスコルド式)もあります。なお、ホスコルド式は鉱業権の評価で適用されることもあります。
- 最後に
直接還元法について説明してきましたが、実務上、簡便法として表面利回り、粗利回りという言葉をよく聞きます。これは一般的には総収益(費用等を控除する前の収益)に対する利回りを示すことが多く、本稿でいう純収益(費用等を控除した後の収益)に対応する還元利回りとは異なりますので注意が必要です。
また、還元利回りのことをキャップレート(CapitalizationRate)ということもありますが、収益のとらまえ方が異なるケースやDCF法の割引率等と同意で用いられること等もあり、実務上は混乱がみられることがあります。
以上