第89回「収益還元法(その5)」
2011.09/27
経済レポート2370号[平成23年9月27日]掲載
- はじめに
収益還元法シリーズの5回目です。収益還元法は基本的には直接還元法とDCF法の2つに大別され、前回は直接還元法についてとりあげました。「直接還元法とは、一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法であり、次式によって表される」というものでした。
今回は、もう1つの方法であるDCF法についてとりあげます。
- DCF法とは
DCF法(Discounted Cash Flow法)とは、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格をその発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法で、基本的には次の式により表されます。
上式のとおり、DCF法は、「毎期の純収益の現在価値の合計」と「復帰価格の現在価値」を足すことにより求めるものです。例えば、賃収ビルを購入して、3年間賃収を得て、3年後に売却すると仮定した場合、「3年間の各年度ごとの純収益の現在価値の合計」+「3年後の売却価格の現在価値」によって求められます。
このDCF法は、評価のみならず、投資の検討等にあたってシュミレーション的に活用される場合もあります。この場合、割引率は投資収益率と同率になるといえます。
- 最後に
直接還元法とDCF法について概説しました。基本的に両手法に軽重はなく、物件の特性、評価目的に応じて両手法は選択又は併用されることとなりますが、一般的に、DCF法はキャッシュフロー表等を用いることにより、直接還元法に比べ説明性に優れているといわれています。
なお、証券化対象不動産の評価を行う場合には、DCF法の適用が義務づけられており、DCF法と併せて直接還元法を適用することにより検証を行うことが適切であるとされています。
以上