第90回「収益還元法(その6)」
2011.10/25
経済レポート2374号[平成23年10月25日]掲載
- はじめに
収益還元法シリーズの6回目です。収益還元法は直接還元法とDCF法に大別され、これまでそれぞれの方法について概説しました。「直接還元法は純収益を還元利回りで還元する方法であり、DCF法は割引率で現在価値に割り引く方法」でした。
今回は還元利回りと割引率についてとりあげます。
- 還元利回りと割引率の違い
還元利回りも割引率も収益性を示すものですが、還元利回りは、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測であることに伴う不確実性を含むものです。一方、割引率は、キャッシュフロー表等で明示された分の変動予測は含まれないものです。
したがって、仮に純収益が永続的に得られかつ一定の趨勢を有すると想定される場合には、「還元利回り=割引率-純収益の変動率」が成り立ちます。
- 還元利回り、割引率を求める方法
還元利回りや割引率は、比較可能な他の資産の収益性や金融市場における運用利回りと密接な関連を有すると同時に、地方別(都心、郊外等)、用途的地域別(商業地、住宅地等)、品等別等(築年、グレード、仕様、維持管理の状態、テナント構成等)によって異なる傾向を持ちます。
求め方としては、①類似の不動産の取引事例との比較から求める方法、②借入金と自己資金に係る割引率から求める方法、③金融資産の利回りに不動産の個別性を加味して求める方法、④投資家調査、⑤不動産インデックス等を総合的に勘案して求めることとなりますが、実務上一般的な方法は、最も投資リスクが低いと認められる不動産の利回りを基準とし、対象不動産の立地条件、建物条件、契約条件、権利関係などの個別的要因に基づくリスクプレミアムを加算して求める方法です。
以上