第1回「デュー・デリジェンス」
2004.03/30
経済レポート2009号[平成16年3月30日号]掲載
バブル崩壊後、不動産市場のパラダイムは大きく変化し、不動産がリスク資産となって久しい。ただ、一方で、新しいビジネスチャンスも多数生まれており、転換期を向かえつつある。「単に保有しておけば良い」といった時代から、遅ればせながら本格的に「知恵も汗も」の時代が到来した感がある。
そこで、本シリーズでは、このような不動産をめぐる新事情を「キーワード」で取り上げ、できるだけ平易に解説したい。
- デュー・デリジェンスとは
デュー・デリジェンス(Due Diligence)、Dueは「公正な、適正な」、Diligenceは「注意を払って」という意味であり、その起源も諸説ある。日本においては、公的には、平成10年橋本内閣当時の第1次金融再生トータルプランで、デュー・デリジェンス=不良債権処理のための適正評価手続と訳されたのが最初である。現在では、様々な意味で使われているが、「適正な詳細調査」を総称してもちいられることが多く、今日、その対象は不動産のみならず、売掛債権、投資有価証券、企業の吸収・合併(M&A)、プロジェクトファイナンス等の場面で定着しつつある。 - デュー・デリジェンスの背景
日本においてデュー・デリジェンスが行なわれるようになった背景としては次の点があげられる。
・デュー・デリジェンスの慣行を持つ外国人投資家の参入
(特に土壌汚染調査は外資の影響が大きい)
・不動産証券化の進展
・不動産に対する諸リスクの認識の高まり - 日本の取引慣行
日本の不動産取引では、売買契約締結前に宅建業者(仲介業者)が重要事項を調査し、買主に対して説明を行うことが通例である。これに対し、アメリカでは売買契約締結後一定の期間内に買手によりデュー・デリジェンスが行なわれその結果によってはキャンセルや価格見直しが行われる場合もありえる。 - だれが行うのか
投資を行う買手側がデュー・デリジェンスを実施することが多いが、情報開示や格付取得等を目的として売手側が行うこともある。費用負担は諸般の事情に応じてケースバイケースが多い。 -
デュー・デリジェンスの内容
これといった定義はないが、およそ次のようにまとめられる。
(1) 物的調査 [1] 建物・設備 劣化の程度、更新の必要性、耐震性等 [2] 環境 土壌汚染の有無、建物の有害物質の有無等 (2) 法的調査 権利、賃貸借、占有の有無、境界、法令制限等 (3) 経済的調査 評価、マーケット、開発動向、経営、賃料変動、地価変動、テナントリスク等
以上のとおり、デュー・デリジェンスは広範囲に及び法律・建築・経営・環境といった多角的な角度から専門的な知識を求められる。このため、宅地建物取引主任者、不動産鑑定士、測量士、土地家屋調査士、建築士、弁護士、公認会計士、税理士、環境コンサルタント、ゼネコン、土壌調査・浄化業者等の連携によって進められることが多い。
以上