コラム(詳細)

第100回「容積率」

2013.01/16

経済レポート2414号[平成24年8月28日]掲載

  1. はじめに  無秩序な土地利用を認めてしまうと火災等の災害の問題、交通問題、環境問題等が生じる懸念もあることから、土地を利用するにあたっては種々の公法上の規制があります。建物の用途を制限する用途地域や特定の建物しか建築できない市街化調整区域等が有名ですが、今回は「容積率」についてとりあげます。
  2. 容積率とは  容積率とは、建物の延べ床面積の敷地面積に対する割合をいいます。建物のボリュームに対する制限です。

    具体的な容積率は都市計画によって定められており、役所で調べられる外インターネットで閲覧できる市町もあります。仮に、敷地全体を利用するとして、容積率の指定が200%の土地の場合は2階建てまでが可能であり、容積率の指定が400%の土地の場合は4階建てまでが可能ということになります(なお、厳密には他の規制がかかることによりフルに利用することが不可能なケースもあります)。

  3. 容積率と土地価格  この様に同じ面積の土地でも指定されている容積率によって建築できる建物のボリュームが異なってくることから、容積率の高低は地価に大きな影響を及ぼします。
    一般に、容積率が高いほど地価は高くなり、不動産業界では「1種あたりいくら」という表現で相場を表わすこともあります(容積率100%あたり1種といいます)。例えば、マンション用地では、容積率が高いほど分譲床面積を多く確保することができる訳ですから、容積率と地価は基本的には正比例の関係にあるといえます。
    逆に、日本を代表する高級住宅地である田園調布の容積率は80%の指定となっており、閑静で緑豊かな住環境を守るものともいえます。
    ちなみに、広島市における最も高い容積率指定は都心部にある商業地で900%、最も低い容積率指定は郊外にある住宅地で100%となっています。
  4. 最後に  以上の様に、地価に大きな影響を与える容積率ですが、容積率をフルに利用してまで建築すべきか否かは需給関係や建築コスト等をも総合的に勘案する必要があります。例えば、駐車場をなるべく広く確保し、建築費を抑えた小店舗で営業する郊外型店舗等は容積率をフルに利用しない典型例です。
    一方で、高度利用が可能な地域にあっては、未利用の隣地の容積率を移転すること等が行われることもあります(空中権、移転容積率、余剰容積率等とよばれます)。

以上