第117回「不動産鑑定評価基準の改正(案)」
2014.06/25
経済レポート2482号[平成26年1月28日]掲載
- はじめに 不動産鑑定士が鑑定評価を行う場合、「不動産鑑定評価基準(以下、単に基準といいます)」に則って行われることが原則です(例外的に、調査報告書等と称して、いわゆる簡易的な調査で行われることもあります)。この基準は、国土交通省事務次官通知であり、不動産鑑定士にとっては評価の統一的な基準です。直近の全面的な改正は平成14年と既に10年以上が経過していることや現下の不動産市場等を踏まえ、平成26年中に全面的な見直しが行われる予定です。
今回は、先日、意見募集(パブリックコメント)において示された改正(案)についてとりあげます。 - 不動産市場をとりまく状況 今回示された改正(案)には、不動産市場をとりまく状況として次の3つが示されています。
①不動産市場の国際化の進展
国際評価基準(IVS)を踏まえた、国内外の投資家等にわかりやすい評価・合理的な評価の実現。
②ストック型社会の進展
防災意識や省エネルギーへの関心の高まりを踏まえた的確な評価の実現。既存建物の建替え・更新や中古住宅流通促進に向けた新たな評価ニーズへの対応。
③証券化対象不動産の多様化
ショッピングセンター、ホテル、ヘルスケア施設等の事業用不動産等の多様な不動産に対応した評価の実現。 - 具体的な主な改正内容(案) ・調査を合理的な範囲のみで可能とする「調査範囲等条件」を導入
・評価手法適用の合理化
・価格の概念の国際評価基準(IVS)との整合性の向上
・建物に係る価格形成要因の充実と規定の整備
・建物の増改築や修繕等の状況を適切に反映した評価の徹底
・既存建物の更新やリニューアルが行われることを前提とする評価プロセス(未竣工建物等鑑定評価)を導入
・事業用不動産(ショッピングセンター、ホテル、ヘルスケア施設等)に係る規定の充実
・定期借地権に係る規定の充実
・継続賃料の評価に係る規定の見直し - 最後に この新しい評価基準は、平成26年3月公表、同年10月の施行が予定されています。12年振りの全面改正であり、不動産の評価が大きく変わります。新基準が決定しだい、その詳細をシリーズでとりあげていく予定としております。
以上
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