コラム(詳細)

第127回「相続と不動産(その3)」

2015.04/14

経済レポート2523号[平成26年11月25日]掲載

  1. はじめに  ①平成27年から相続増税となること、②相続財産は不動産が最も多く過半を占めること、③相続対策とは税に関する対策と争族を避けるための対策とが必要なこと、④不動産の最大の弱点は、価格がわかりにくいこと、流動性(キャッシュ化)に劣ること、分配(分割)しにくいことであり、相続対策上もこれらが大きなネックとなることに触れ、前々回は価格、前回は流動性(キャッシュ化)について詳しくとり上げました。
    今回は、分配(分割)しにくいことについて詳しくとり上げます。
  2. 分配(分割)について  キャッシュであれば分配(分割)することは容易に可能です。ところが遺産分割で不動産を分配する場合、不動産はキャッシュには及びません。例えば1つの土地を3つに分割する場合、まず、地積が小さくなることによってデメリットが生じる等分割をすること自体が土地の価値を低下させることもあります。また、分割後のそれぞれの土地は、日照が違う等の諸条件が異なることに伴って価格差が生じることもよくあります。
  3. 共有について1 共有不動産の評価
    共有とは、持分として共同で所有していることをいいます。例えば、相続等で相続人A、B、Cの3名が各持分3分の1ずつで相続した場合、A、B、C3名の共有状態となります。仮にこの不動産の価値を900万円とした場合、この様な共有状態でAさんが自己の所有する持分3分の1を単独で売却しようとすれば、共有のリスクや制約等を考えるとこの不動産の価値の3分の1である300万円で実際の買い手をみつけるのは困難です。この様なことから、持分のみを単独で第3者に売却することを前提とした評価を行う場合には減価を行うことが一般的であり、この減価を共有減価といいます。

    2 共有のメリット・デメリット
    以上は、持分のみを単独で売却することを前提とした評価ですがメリットもあります。例えば、共有名義にして所得を合算することによってローンが借りやすくする。相続時には、分割相続か共有相続するかによって相続税が大きく変わるケースもあります。
    筆者の場合、仕事柄か、共有者間でいさかいとなるケースを多くみることから、基本的に共有することはお勧めしていません。

    3 共有の解消方法
    持分のみを単独で売却すること以外にも、共有の解消方法としては次のものもあります。
    (1)現物分割…現実に共有物をいくつかに分けて、それぞれを単独所有とする方法
    (2)代金分割…共有物そのものを売却してその代金を分ける方法
    (3)価格賠償による分割…自己の持分を対価を受けとって他の共有者に取得してもらう方法

  4. 最後に  キャッシュと不動産、相続にとってどっちが有利か?よく、相続税の観点からみると、一般論として、相続税の評価額としては、不動産の方が低く止まることから、キャッシュに比べて有利であるといわれています。一方で、分配(分割)しやすいのは明らかにキャッシュですから、この点ではキャッシュに軍配が上がります。
    相続に関しては、財産のポートフォリオやボリューム、小規模宅地等の特例、生前贈与、個人名義にしておくか法人名義にしておくか等、さらには、税や経済合理性の観点だけでは割り切れない思いや事柄等もあり、日頃から長期目線でオーダーメイドな対策を行うことが賢明です。

以上

 

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