第145回「証券化不動産の評価(その5)」
2016.10/12
経済レポート2593号[平成28年5月24日]掲載
- はじめに シリーズで、「証券化不動産の評価」をとりあげています。日本におけるJリート市場は平成13年9月に2銘柄、資産規模0.3兆円、時価総額0.2兆円でスタートしました。平成28年2月末時点では53銘柄、資産規模14.6兆円、時価総額11.5兆円にまで拡大し、その投資対象も多様化。平成32年頃にはJリート等の資産総額を約30兆円に倍増させるとする成長目標も掲げられています。こうしたなか、今回は「地方都市における不動産証券化」に言及します。
- 地方都市における証券化の実態 平成26年におけるJリートの保有物件をみると三大都市圏での物件取得は303件、地方圏では97件(約24%)。地方圏は4年連続で物件取得数、割合とも増加しています。ある調査によると、地方圏の中では札幌、仙台、広島、福岡といった中枢都市が半数を占め、人口10万人以下の都市では1割程度の実績となっている模様です。
また、人口規模が小さくなるにしたがって、商業、ホテル、物流施設のウエイトが大きくなる(オフィス、住宅は小さくなる)傾向があるようです。
地方創生、地域活性化の観点からも、期待されている不動産証券化事業ですが、地方都市においては残念ながら今のところは、活用が進んでいないのが実態となっています。 - 地方都市における証券化 地方において証券化の活用が進んでいない主な要因としては次の2つがあげられます。
・小規模なものが多く、組成時の事務コストを始めとする諸コストが大きくコスト倒れとなる。許可基準のハードルが高い。収益性の確保が難しい。
・地方においては不動産証券化の知識やノウハウを持った人材が不足している。方向性としては、今後はこれらの課題を踏まえて、地方都市においても証券化事業を成立させるための各種の環境整備(施策等)が展開されていくものと思われます。
- 最後に 不動産ファイナンスの環境整備の1つとして、最近話題のフィンテック、クラウドファンディング等の活用も提言されている外、地域活性化事業に対して、地域のために役に立ちたいといったいわゆる「志ある資金(低配当に止まっても地域貢献したい)」等も期待されています。
以上
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