第154回「タワーマンションの固定資産税評価見直し(その2)」
2017.07/18
経済レポート2629号[平成29年2月21日]掲載
- はじめに 平成29年度税制改正で、「居住用超高層建築物に係る固定資産税の見直し」が決定しました。居住用超高層建築物とは高さが60mを超える建築物のうち複数の階に住戸があるものをいい、タワーマンション等といわれています。
現在のマンションの固定資産税の評価は、まず、一棟全体として評価し、次に、これを各部屋の床面積に応じて割り当てていく(按分する)ものであり、階層等によって評価額に差が生じない(床面積が同じであれば、評価額は変わらない)評価方法となっています。
税の評価では低層階と高層階が同じ単価で評価されているのは市場の実勢にあっていない。高層階の物件は節税対策(いわゆるタワマン節税)として利用されているといった批判から、今回の見直しでは、一棟全体の評価額は変えずに、高層階ほど高く、低層階では低くなるように按分する(補正する)方法がとられることとなりました。 - 按分する方法(階層別専有床面積補正率) マンションは、一般に高層階ほど分譲単価が上昇します。これは、日照、通風、眺望やステータス等が優れることによるものです。(階層に着目してその価値を比で表したものを階層別効用比といいます。)さらに、同じ階のなかでも南向き、北向き、間取り、エレベーターとの距離、角部屋等によっても価値が異なります。(こちらは位置別効用比といいます。)
今回の見直しでは、階層別専有床面積補正率によって補正する(按分する)とし、その補正率は、「1階を100とし、階が一を増すごとに、これに、10を39で除した数を加えた数値とする。」としています。つまり、40階で1割増しの設定となっています。 - 40階で1割増し 今般の見直しは、原則的な鑑定評価の基準を簡素化して階層に応じてのみ価格差を認定し、その価格差(補正率)は1階上がるごとに一律に約0.26%(10÷39)としています。
階層別の価格差に着目した、階層別専有床面積補正率という概念を新たに導入したことは、適正な評価に近づいたという意味では一歩前進ですが、「40階で1割増し」の価格差設定は、実際のマーケットに比べれば思った以上に価格差が小さい(割増率が少ない)改正となっているのではないでしょうか。 - 最後に この改正は、平成30年度から新たに課税されることとなるものに適用するとしています。したがって既存のものや60mを超えないマンションについては適用除外となっています。
また、「天井の高さ、附帯設備の程度等について著しい差違がある場合には、その差違に応じた補正を行う。」、「区分所有者全員による申出があった場合には、当該申し出た割合により按分することも可能とする。」ともしています。
以上
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