第155回「広大地(その1)」
2017.08/21
経済レポート2633号[平成29年3月21日]掲載
- はじめに 平成29年度税制改正で、「広大地」の評価見直しが決定しました。これは、相続税法の時価主義の下、財産評価の適正化のために、実態を踏まえて見直しを行うとしています。
具体的には「広大地の評価について、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに、適用要件を明確化する。」となっています。
2回にわたって広大地をとりあげます。今回は、そもそも論として評価と地積について言及します。 - 単価と総額(地積と評価) 1匹100円のサンマを5匹買います。全部でいくらになりますか?単価に数量を掛けあわせて総額を500円と求めます。
では500匹ではどうでしょう。買い手としては一度に沢山買うのであるから割引して欲しい、売り手としても一度に沢山買ってもらえるのであれば販売コスト等も安くつくので購入数量に応じて割引してもよいと考えます。(数量割引といいます。)様々な交渉過程を経て購入代金は決定されることから、結果的にサンマ1匹当たりの単価は100円を下回ることになります。
不動産の場合も、一口に坪当たりいくらという言い方がよくされますが、数量や総額に応じて単価は変動します。さらに地積の大小によって最有効使用が異なる等の質的変化が起こる場合もあります。単価を総額の視点から検討することを専門用語では「単価と総額との関連の適否」といいます。不動産の評価は価格(単価)を求めるのではなく価額(総額)で行うものであるといわれる所以です。
- 具体例 郊外の住宅地をイメージしてみて下さい。A地(150㎡)を12万円/㎡とします。B地(300㎡)C地(800㎡)D地(100㎡)の評価はいくらか?
・A地は、12万円/㎡×150㎡=1,800万円。建物を合わせても3,000万円前後でマイホームが手に入ります。
・B地は、300㎡ですから仮に12万円/㎡を掛けると3,600万円。
土地代だけで3,600万円ですから、さらにこれに建物が加わると手が出ない値段になります。土地代だけで3,600万円出せる人はもっと中心部に土地を求めます。B地はかなり値を下げてエンドユーザーに売却するか、それでも売れない場合は、点線の様に2分割して分譲することを計画する不動産業者の採算性に見合った価格(分筆費用、不整形になることによるマイナス、業者利潤等を控除)で売却することになります。
・C地の場合は、もはや戸建住宅利用を目的とするエンドユーザーに売却することは困難であり、点線の様に道路を入れる必要も考慮した不動産業者の採算性に見合った価格になります。
・逆に、規模の小さいD地はどうでしょうか?A地に比べ使い勝手が悪いし見劣りするから12万円より安くなるとの考えもありますが、総額が低く止まることから、値ごろ感が出てかえってエンドユーザーが手を出しやすくなり、結果的に単価が上昇することもあります。いわゆる小口割高といわれる現象です。 - 最後に
上記は郊外の住宅地の例でしたが、中心部のある程度まとまったマンション適地はどうでしょうか?マンション需要が強ければ、単価が上昇することもあります。(単価が上昇することを面大増価といいます。逆に、規模が大きすぎて単価が下ることを面大減価といいます。)
この様に土地の規模は大きくても小さくても増減価要因となります。
以上
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