第174回「消された公園(ヒヤリハット事例)」
2019.03/13
経済レポート2709号[平成30年10月16日]掲載
- はじめに 先日、購入価格を検討することを目的として、ある土地建物の評価依頼を受けました。この物件は、営業所として使用中の土地建物で、現地を拝見しますと、一見、なんでもない物件に見えましたが、調べていくうちに・・・
今回は、ヒヤリハット事例として「消された公園」をお届けします。 - 開発行為 一定規模以上の土地について、開発行為(建築物の建築等を目的として、土地の区画形質の変更)を行う場合には、原則として知事の許可が必要となります。この制度は、良好かつ安全な市街地の形成と無秩序な市街化の防止を目的とするものです。したがって、開発に際しては、道路・公園・給排水施設等の公共施設の確保や防災上の措置等に関して基準が設けられています。
つまり、大きな土地を開発する場合には、「勝手にやってはダメですよ」ということです。これは、地主からみれば、公共施設等を整備することによって道路事情や環境が良くなり土地自体の単価は上昇しますが、一方で、造成費がかかったり、潰れ地が発生することに伴って売却可能な地積自体が減少することにもなります。 - ヒヤリハット事例 本件は、営業所として利用されていますが、調べていくうちに、その敷地の一部(1筆の土地の一部)に、本来は公園として(公共施設として)利用されるべき部分が含まれていることが判明したものです。現在の所有者も現状の状態で購入しており、まさか自らが利用している敷地のなかに公園部分が含まれていたとは知らなかったようです。
なぜこの様な事態になったのでしょうか?開発行為を受けて設置された道路・公園等の公共施設は、完成後は、その市町村に帰属し、その管理に属するのが原則です。但し、例外規定があり、法の定める協議により、別段の定めをしたときは開発業者に属したままになっているケースがあります。
本件はまさしくこのケースでした。いつかの時点で、公園はなくなり、1筆の土地となって(敷地に組み込まれて)売却対象とされていました。 - 最後 本件は、行政機関に出向いて、開発登録簿の閲覧を行った結果、今まさに売り出されている敷地のなかに公園が含まれている事態が判明したものです。所有権が残っていることを奇貨として、意図的にロンダリング的な行為を行ったものではないかと思われます。
「評価額を語る前に、詳細調査を!」調査の重要性をあらためて認識させられる事例でした。
以上
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