第178回「土地神話の誕生」
2019.07/17
経済レポート2725号[平成31年2月19日]掲載
- はじめに 新元号(改元)まで、あと3ヶ月と迫りました。そこで、温故知新、平成時代を振り返って、土地神話を取り上げます。今回は、序章として「土地神話の誕生」です。
そもそも土地神話とは、「土地は必ず値上りする」、「土地には絶対的な価値がある」とする神話です。当時から、神話と呼ばれていましたので、合理的根拠はないと思われますが、バブル崩壊まで、地価は第一次オイルショック時に一時的に値下りを経験したことがあるものの、上昇し続けており実話でした。
- 土地神話誕生の背景 平成2年、山本七平氏は著書『日本人の土地神話』のなかで、広い意味で日本における土地意識は鎌倉時代以来変化がないとしています。また、次の様な安定志向が日本人の不動産信仰、土地神話を生んだとしています。
- 沽券にかかわる こうしてみると江戸時代から、老後は不動産収入でハッピーリタイアメント的な発想があったことがわかります。また、江戸では正式な町人として認められているのは町屋敷の所有者であり、「沽券にかかわる」という言葉にみられるように、当時、不動産の権利証に相当する証文であった沽券は、身分や面目、信用等を表わすものでもあったようです。ステータスシンボルとして不動産を所有するという購入動機があったことも覗えます。
また、現代でも、バブル崩壊前は、企業経営や銀行融資の面からみても「事業そのものには失敗したが、不動産の値上りによって救われた。」、「事業そのものの収支はトントンであっても不動産の価格が上昇しているので問題はない。」、「企業価値とは不動産の含み益である。」といった不動産価値に依存する傾向が強くありました。 - 最後 このようにして生まれた、不動産信仰、土地神話ですが、昭和60年のプラザ合意を契機とした金融緩和等を背景に不動産や株式などが高騰し、いわゆるバブル経済に突入することとなります。
次回は、土地神話の崩壊(バブル経済の崩壊)について取り上げます。
以上
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