第199回「所有者不明土地に関する法改正」
2021.04/15
経済レポート2809号[令和2年11月17日]掲載
- はじめに 令和2年3月に土地対策の憲法ともいえる土地基本法が平成元年の制定以来、初めてのそして抜本的な改正が行なわれ、所有者不明土地や管理不全土地の増加に伴い、「管理」の観点が大きくクローズアップされています。
この対策の一環として、「所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するためにはどのような方策が必要か。」また、「発生を予防するためにはどうすれば良いか。」の問題意識のもと、「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案(以下、単に「中間試案」といいます。)」が令和元年12月にとりまとめられました。今回は、この中間試案をとり上げます。 - 民法等は次の見直しを検討
1 共有制度
不明共有者等に対して公告等をした上で、残りの共有者の同意で、土地の利用を可能にする制度の創設や、共有者が、不明共有者の持分を相当額の金銭を供託して取得するなどして、共有関係を解消する制度の創設
2 財産管理制度
所有者不明土地の管理に特化した土地管理制度の創設や、不在者財産管理制度・相続財産管理制度の合理化
3 相隣関係
ライフラインの導管設置等のために他人の土地を使用することができる制度の創設
近傍の土地所有者等による管理不全土地所有者に対する管理措置請求制度
4 遺産の管理と遺産分割
遺産分割がされずに長期間が経過した場合に遺産を合理的に分割する制度の創設
5 土地所有権の放棄
土地の管理コストの他者への転嫁や、所有権を放棄するつもりで土地を適切に管理しなくなるモラルハザードが発生するおそれがあるため、限定された要件を満たす場合にのみ、土地所有権の放棄を認め、放棄された土地を国に帰属させる方向 - 不動産登記法等は次の見直しを検討
1 相続登記の申請の義務化等
不動産を取得した相続人に、相続登記・住所変更登記の申請を義務付ける
相続人からの簡易な申出による氏名・住所のみの報告的な相続人申告登記の新設
登記漏れ防止のため、登記官が被相続人名義の不動産の目録を証明する制度の新設
登記所が他の公的機関から死亡情報等を取得して不動産登記情報の更新を図る方策
2 その他の見直し事項
外国に居住する所有者に関して、国内の連絡先の登記制度の新設や、外国住所の確認書類の見直し - 最後に この中間試案は、法制化に向けて最終的な審議を経て、令和2年度中にできるだけ速やかに法案提出されるスケジュールとなっていますが、新型コロナウイルス感染症の影響による遅延も懸念されています。
この中間試案のなかで、特に衆目を集めているのは、「土地の所有権の放棄」ではないでしょうか。次回は、土地所有権放棄を掘り下げてみます。
以上
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