第203回「オークション」
2021.08/10
経済レポート2825号[令和3年3月23日]掲載
- はじめに 前々回、「勝者の呪い」、「勝者のジレンマ」、「うぬぼれ仮説」といった、オークション用語をとり上げました。今回は、もう少し、オークションを深堀りしてみます。実はオークションには、様々な方式があり、不動産や美術品、工事入札といった単一アイテム1単位だけでも、次の4つの方式が考えられます。
- 最適なオークション
慶応義塾大学 経済学部教授 坂井豊貴著「マーケットデザイン」によれば、不動産のような、単一アイテム1単位で、封印型オークションを実施する場合では、1位価格入札方式ではなく、2位価格入札方式が最適な方式であるとしています。この2位価格入札方式とは、1位価格入札者が落札者となりますが、落札者は2位の入札者の金額を支払う方式です。最近では、インターネット広告の入札にも用いられる等しています。この方式は、実質的には、「敗者の中で一番高い価格」で購入することに外なりません。売り手にとっては、一見すると安値で売却されたともとれますが、1位、2位、どちらの方式を採用するかによって、入札者のプライシング(値付け)そのものに変化が生じるため、行動経済学の見地からは、結果的には、決して安値売却とはならないと指摘されています。
また、結論として、2位価格入札方式を採用して、「1番高い評価額より低く、2番目に高い評価額より高く、できれば1番高い評価額に近い金額」で、最低落札価格を設定することができれば、売り手にとって、最も期待収益が上げられる工夫であるともしています。
なお、美術品のオークションでよく用いられる公開型競り上げ入札方式は、最高値は、結果的には、2位価格に対して若干上乗せした価格となることから、実質は2位価格で落札者が決定されていることになります。
- 品質情報の開示等
オークション理論の立場からは、勝者の呪いや入札時の予想以上に瑕疵が大きいといった勝者の災いが解消され、より良い配分と売り手収益が確保され、入札が持続可能的に上手く機能するためには、適切な品質情報の開示が欠かせないとされています。
開示にあたっては、入札参加者の不安や不確定要素をあらかじめできるだけ取り除いておけることに資するいわば問題解決型の情報提供、さらには、見せ方の工夫(いわゆる見える化やスクリーニング、シグナリング化)が必要とも感じるところです。
- 最後に(情報の非対称性を見方につけよ) 売り手と買い手、または、入札者間等で保有する情報に格差があることを「情報の非対称性」といいます。オークションにあたって開示される情報に加えて、いわゆる経験値や目利力を発揮することができれば、情報の非対称性を逆手にとってビジネスが有利に展開できるとも思います。(インサイダーとの意ではありませんので念のため。)
以上
〒730-0013 広島市中区八丁堀7番2号
株式会社 小川不動産鑑定
代表取締役 小川 和夫
(不動産鑑定士)
TEL:(082)222-2253 FAX:(082)222-2254