第202回「地域福利増進事業」
2021.07/10
経済レポート2820号[令和3年2月16日]掲載
- はじめに 令和2年3月に土地対策の憲法ともいえる土地基本法が平成元年の制定以来、初めてのそして抜本的な改正が行なわれ、所有者不明土地や管理不全土地の増加に伴い、「管理」の観点が大きくクローズアップされています。所有者不明土地は、適切な管理が行われることが期待できない土地であり、放置すれば周辺環境や景観の悪化を引き起こしかねないことや、利用したくても利用することができず、大きな問題となっています。
こうしたなか、所有者不明土地を利用して地域のための事業を行うことを可能とする「地域福利増進事業」が創設されています(令和元年6月施行)。 - 地域福利増進事業とは
所有者不明土地を利用して地域住民等の福祉や利便の増進のための施設を整備することができる制度です。都道府県知事の裁定を受けることで、最長で10年間土地を使用できます(関係者が同意すれば使用期間の延長もできます)。なお、地方公共団体だけでなく、民間企業やNPO、自治会、町内会等、誰でも事業を行うことができます。
- 補償金
裁定を受けることができれば、補償金を供託することで所有者不明土地の使用権を取得することができます。
地域福利増進事業ガイドラインでは「補償金の見積額の算定の基礎となる土地の価格は、不動産鑑定業者に鑑定評価等を求めて得ることを基本とし、なお、この鑑定評価等に加え、近傍類地の賃借りの事例収集、借賃相当額の算定、控除すべき維持管理費用の算定等、補償金額の具体的な算定についても、一括して不動産鑑定業者に委託することも考えられます。」とし、補償金は、次式により算出することを基本としています。補償金の額 = 1年間当たりの借賃等相当額(注) × 年金現価率 (注)
・近傍類地に賃借の事例がないときは、次とすることを基本とする。
宅地、宅地見込地及び農地…4パーセント
林地及びその他の土地…3パーセント
・土地の使用の方法は地域福利増進事業に限られることから、正常な価格から、最有効使用に対する利用価値の減分を考慮して求めることを基本とする。
・維持管理費用相当額を控除する等の考慮をし、補償金額を求めることができることとする。
なお、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会では、実務指針を令和元年9月に制定しており、不動産鑑定士が行う際には、これに準拠することとなります。
- 最後に この地域福利増進事業は、所有者不明土地の利活用を可能とする今までにない新しい制度です。国でも事例構築モデル調査として費用の一部を支援する取組も行っています。
以上
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(不動産鑑定士)
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