第205回「規準」
2021.10/12
経済レポート2833号[令和3年5月25日]掲載
- はじめに 前回、令和3年地価公示でみる広島県の土地価格をとりあげました。この地価公示制度は1969(昭和44)年にスタート、今や社会・経済活動における制度インフラとしてすっかり定着し、多くの役割を担っています。その役割の1つに「不動産鑑定士は、公示区域内の土地について鑑定評価を行う場合において、当該土地の正常な価格を求めるときは、公示価格を規準としなければならない」と地価公示法第8条で規定されています。
今回は、この「規準」をとりあげます。
- 公示区域とは
地価公示制度は当初は970地点で東京・大阪・名古屋の都市のみが対象でしたが、その後順次エリアを拡大してきました。その範囲は、かつては、都市計画法における都市計画区域内だけでしたが、現在では、「その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域」が追加されたため、都市計画区域外であっても例外的に公示区域に含まれることがあります。
令和3年地価公示では、全国ベースで、都市計画区域内が25,982地点。都市計画区域外は18地点のみとなっています。広島県では全639地点のうち、廿日市市宮内字東谷の廿日市-13の1地点のみが都市計画区域外です。したがって、広島県における公示区域は、都市計画区域とこの廿日市-13の影響を受ける範囲となります。
- 規準とするとは
規準とするとは、地価公示法第11条では次のとおり規定されています。公示価格を規準とするとは、対象土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる公示地との位置、地積、環境等の諸要因についての比較を行ない、公示価格と対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいう。この場合、地価の変動を考慮して、必要に応じていわゆる時点修正を行わなければならない。(一部を省略) なお、比較対象とする公示地点の選択にあたっては、ただ単に、距離が近い等だけではなく、比較可能性という観点からの類似性を重視することが必要です。
- 最後に 地価公示を互いに補完する制度として、都道府県地価調査(基準地価)があります。地価公示が毎年1月1日を基準日としているのに対して地価調査は7月1日を基準日としていることやその実施範囲が地価公示より広く都市計画区域外にまで及んでいること等が異なります。
この様なことから、対象土地と規範性の高い地価公示地点がない場合や都市計画区域外の場合には、地価公示地点に代えて、地価調査地点を使用することが実務上はよくあります。なお、鑑定上、比準、基準、規準等似た様な用語が多くあるため、規準は「キジュン」ではなく「ノリジュン」と俗称されています。
以上
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