第239回「マンションの評価(その2)」
2024.08/29
経済レポート2971号[令和6年3月26日]掲載
- はじめに 相続税評価額と時価(市場売買価格)との乖離を利用したいわゆる「タワマン節税」は、令和4年4月19日最高裁判決が下される等注目をあつめました。こうしたなか、令和5年10月国税庁から、マンション評価の新通達(居住用の区分所有財産の評価について)が示され、令和6年1月1日以降に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価については、この新通達によって評価する取扱いに変更されています。
そこで、前回からシリーズでマンションの評価をとり上げています。今回は、「新通達に至った見直しの経緯」に触れます。 - 相続税等(相続税・贈与税)における財産の価額
そもそも、相続税における財産の価額は「当該財産の取得の時における時価(客観的な交換価値)」によるものとされており(時価主義)、これを受けて、国税庁では財産評価基本通達に各種財産の具体的な評価方法を定めています。
マンションについては、従来(見直し前)の相続税の評価方法は次のとおりでした。
- 財産評価基本通達6項
相続税の評価(マンションの評価)は、上記の財産評価基本通達に沿った方法によって評価を実施することが原則です。しかしながら財産評価基本通達6項に、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と例外が定められており、「著しく不適当」な場合に限り、上記の通達以外の方法で評価する取扱いとなっています。
マンションについては、この通達に沿った評価額と時価(市場売買価格)と大きな乖離が生じているケースもあり、このような乖離があると、相続税の申告後に、国税当局から、通達6項による時価で評価し直して課税処分をされるというケースも発生していました。 - 最後に 上記の様なケースで争われた、令和4年4月の最高裁判決(国側勝訴)以降、マンションの評価額の乖離に対する批判の高まりや、取引の手控えによる市場への影響を懸念する向きも見られ、課税の公平を図りつつ、納税者の予見可能性を確保する観点等からも、マンションの評価に関する通達を見直す(適正化する)必要が求められたものです。
なお、実際、通達6項の適用件数は年間数件程度と限られており、最高裁判決でも、通達によらない評価とすることは合理的な理由がない限り平等原則に反するともされています。
(備考)国税庁の「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について(報道発表資料)」に拠って作成しています。
以上
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