コラム(詳細)

第61回「不動産リスク(その3)」

2009.04/28

経済レポート2254号[平成21年4月28日・5月5日]掲載

  1. はじめに  

    不動産リスクシリーズの第3回です。最近「環境債務」という言葉がよく使われるようになりました。環境債務(Environmental Liability)とは、企業活動によって環境に及ぼす影響、あるいは将来及ぼしそうな損失、費用、負荷をいいます。環境問題の高まり等を背景に企業は環境債務にいかに対応するかが問われています。

  2. 資産除去債務とは  

    企業価値向上のためには、環境債務への取組みと情報開示が必要となりますが、環境債務のなかでも特に注目されているのが「資産除去債務(Asset Retirement Obligation:ARO)」です。これは、汚染の処理等のために将来のある時点で発生する可能性のある負担をいいます。

    例えば、将来、建物を解体する場合、そのなかに汚染物質が含まれていると通常の解体費用を上回る処分費用がかかります。こういった費用を、建物を解体する前から、資産除去債務として認識し、財務諸表にも反映させようという考え方です。

  3. 資産除去債務に関する会計  

    これまで、日本では、この資産除去債務を計上する会計処理は行われてきませんでした。しかし、企業会計基準委員会(Accounting Standards Board of Japan:ASBJ)から2008年3月に公表された企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」では、2010年4月1日以後開始する事業年度から適用することとなる(早期適用も可)としています。

  4. 最後に
    この会計基準は、処分を行った期だけで処理費用を計上すると膨大な損失が生じ、いっきに企業価値が損なわれるリスクがあることから、将来の支出が見込まれる処理費用を現在価値に置き直す(割引いて)バランスシートに計上し、早期に減価償却を認めるものです。また、情報開示やより正確な企業価値の把握に資することとなると同時に、経営者に有害物質の処理を促す強力なインパクトにもなると思われます。

(参考文献)
・CRE戦略を実践するためのガイドライン(国土交通省)
・環境債務の実務(藤井良広編著)等

以上