コラム(詳細)

第133回「ピケティとrとg」

2015.10/20

経済レポート2546号[平成27年5月26日]掲載

  1. はじめに  今、世間を席巻している不等式r>g。フランス人経済学者トマ・ピケティのベストセラー「21世紀の資本」が話題となっています。そこで今回は、閑話休題、いつもと趣向を変えて、不動産評価の立場から、ピケティとrとgについて考えてみます。
  2. ピケティのrとg(r>g)  ピケティはこの本のなかで、歴史的な検証の結果、資本収益率(r)がほぼ一貫して4~5%で推移してきたのに対して、経済成長率(g)は最大でも4%未満、平均で1.6%であり、rがgを常に上回る「r>gの不等式」を実証したとし、格差の拡大や、その処方箋等についても言及しています。
  3. 不動産のrとg  投資用不動産を評価する手法には様々なものがありますが、その代表的なものである直接還元法は次式で表されます。

       すなわち、還元利回りはその物件毎の固有の利回りから、その物件の期待成長率を加減したものとして求められます。なお、ピケティのgが経済成長率であるのに対して、不動産のgはその物件自体の将来的な値上がり又は値下がり予測率ともいえますので定義は異なります。ピケティのr>gの不等式が実際に格差の拡大をもたらすか否かの議論は置いておいて、元本が保証されていない不動産について、g(経済成長率)以上のr(リターン)を期待することは投資家の投資行動としては、当然である(そもそもr>gが期待できなければ、だれも投資しない)ともいえます。
       一方で、投資対象ではなく、保有している不動産、特に昨今問題となっている空屋では、そもそもキャッシュフロー的な投資対象とはなりにくいことから式そのものが成立せず、発展性のある地域を除いて負の資産となる可能性が高いともいえます。
       もっともピケティは、期待利回りではなく、あらゆる資本トータルでの結果論としてのr>gであるとしています。

  4. 最後に(民法のr)  民法が120年ぶりに抜本改正され、明治29年の民法制定以来5%であった法定利率は、市中金利にあわせる形で3%に引き下げられ、その後は変動制となる改正案となっています。そもそも民法の法定利率(r)とは、一般的な貸出時の金利水準と解釈されています。この5%は、民法制定時の農地(米)の還元利回りが5%程度であり、当時は農地の還元利回りが貸出金利にも影響を与えていたとする説もあります。今回の民法のrの改正は米本位制からの脱却といったら筆がすべりすぎでしょうか。

以上

 

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