コラム(詳細)

第204回「令和3年地価公示」

2021.09/17

経済レポート2829号[令和3年4月20日]掲載

  1. はじめに  令和3年3月23日、国土交通省は「令和3年地価公示」を公表しました。これは、全国26,000地点を対象に、令和3年1月1日時点における地価を公示したもので、今般は、特に、令和2年2月からの新型コロナウイルス感染症拡大の地価への影響に関心が高まっていました。国土交通省では、「全国全用途平均で6年ぶりに下落、コロナ禍の影響は用途や地域で異なる。」と総括しています
  2. 全国の地価動向
     全国の用途別の平均変動率は、住宅地▲0.4%、商業地▲0.8%、工業地+0.8%と、住宅地が5年ぶり、商業地は7年ぶりの下落となり、工業地は5年連続の上昇を維持したもののその上昇幅は縮小しています。その内容をみると、東京、大阪、名古屋の三大都市圏では、全用途の平均、住宅地、商業地はいずれも8年ぶりに下落に転じ、工業地は7年連続して上昇したもののその上昇幅は縮小しています。地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)では、全用途の平均+2.9%、住宅地+2.7%、商業地+3.1%といずれも上昇幅は縮小したものの大崩れは回避し、今のところ影響は小幅に止まっています。なお、地方圏では、新型コロナウイルス感染症の影響以外に、地場産業の低迷や人口減等で地価の下落に歯止めがかからない地点もあり、二極化も一段と進んでいる状態にあります。
     日本の最高地価である東京銀座四丁目の地価公示地点は、5年連続して過去最高を更新していましたが、今般は、▲7.1%で1㎡当たり53,600千円と9年ぶりに下落に転じた外、大阪では、道頓堀の地点が全国の商業地で最大の下落幅▲28%を記録し、1㎡当たり5,800千円となる等大阪市中央区の繁華街ミナミが全国の下落率ワースト10のうち8地点を占め、訪日客激減の影響をまともに受けた結果となりました。
  3. 広島県の地価動向
       広島県の用途別の平均変動率は、住宅地▲0.4%(前年+1.3%)、商業地▲0.9%(前年+3.9%)、工業地+0.3%(前年+2.2%)、住宅地が5年ぶり、商業地は6年ぶりの下落となり、工業地は上昇を維持したもののその上昇幅は縮小しています。
     住宅地は、継続地点全445地点のうち156地点が上昇、横ばいが73地点、下落は216地点、前年に比べ、上昇地点は104地点減少し、下落は61地点増加しており、上昇地点は広島市が114地点と7割強を占めています。
     商業地は、継続地点全154地点のうち45地点が上昇、横ばいが22地点、下落は87地点、前年に比べ、上昇地点は67地点減少し、下落は52地点増加しており、調査地点のある19市町のうち、上昇したのは東広島市と府中、海田町の1市2町に止まり、広島市は▲0.4%で、前年の+7.7%から急落しています。
     工業地は、継続地点全35地点のうち13地点が上昇、横ばいが11地点、下落は11地点、前年に比べ、上昇地点は13地点減少し、下落は8地点増加しています。呉市は全3地点で下落、福山市では上昇地点がない一方で、東広島市では全3地点で上昇。広島市では下落地点がなく上昇ないし横ばいとなっており、市町によって特色が出た結果となっています。
     平成30年7月豪雨の被災地では、被災直後の前々回地価公示で、坂町小屋浦の地点は▲14.0%と住宅地としては全国第4位、呉市安浦町の地点は▲11.0%と商業地では全国トップの下落率となっていましたが、今回の令和3年地価公示では、坂町小屋浦の地点は▲0.2%(前年▲3.6%)、呉市安浦町の地点は▲3.7%(前年▲4.2%)と変動率は概ね災害前の水準に戻っています。
     全体的には、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響でオフィス街や歓楽街、観光地等幅広い地点で下落が目立つ形となっています。なお、山間部や島しょ部では下落が引続いています。

  4. 最後に  広島県の地価のトップは、12年連続で「広島市中区八丁堀15-8」。344万円で前年の+8.2%から▲3.1%と9年振りに下落に転じた外、歓楽街にある胡町の地点が広島県内で最大の下落幅▲12%を記録。料飲店が集まる繁華街はコロナ禍の影響をまともに受ける結果となりました。
     以上、令和3年地価公示が示した地価動向を取り上げました。一日も早いコロナ禍の終息を願うばかりです。

以上

 

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