第235回「継続賃料(賃料の概念)」
2024.04/18
経済レポート2955号[令和5年11月21日]掲載
- はじめに シリーズで、継続賃料(既に契約関係に入っている当事間における賃料の改定)を巡る評価をとり上げています。今回はそもそも論ですが賃料の概念(用語、種類等)について整理してみます。
- 正常賃料、限定賃料、継続賃料
まず、不動産鑑定評価基準は賃料を次のとおり整理(定義)しています。
(1)正常賃料
正常賃料とは、正常価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)をいいます。
(2)限定賃料
限定賃料とは、限定価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料(新規賃料)をいいます。
限定賃料を求めることができる場合を例示すれば、次のとおりです。
①隣接不動産の併合使用を前提とする賃貸借等に関する場合
②経済合理性に反する不動産の分割使用を前提とする賃貸借等に関する場合
(3)継続賃料
継続賃料とは、不動産の賃貸借等の継続に係る特定の当事者間において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料をいいます。
- 実質賃料、支払賃料
次に、賃料の外に、権利金、敷金等の一時金が授受されることが多いこと等から実質賃料と支払賃料という用語で峻別をし、慣行上、水道光熱費等が共益費等の名目で支払われる場合もあるが、これらのうちには実質的に賃料に相当する部分が含まれている場合があることに留意する必要があるとしています。
(1)実質賃料
実質賃料とは、賃料の種類の如何を問わず賃貸人等に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい、純賃料及び不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等から成り立つものです。
(2)支払賃料
支払賃料とは、各支払時期に支払われる賃料をいい、契約にあたって、権利金、敷金、保証金等の一時金が授受される場合においては、当該一時金の運用益及び償却額と併せて実質賃料を構成するものです。
支払賃料は、実質賃料から、賃料の前払的性格を有する一時金の運用益及び償却額並びに預り金的性格を有する一時金の運用益を控除して求めるものとされています。 - 最後に 裁判例(裁判所)では、継続賃料に関しては借地借家法第32条の条文に照らしてか「相当賃料」といい、それ以外では「適正賃料」という用語を用いることが多いようです。
また、税務上は、「相当の地代」、「通常の地代」という概念があり、課税の取扱いが異なっています。なお、相当の地代の改定方法については、「相当の地代の改訂方法に関する届出書」の提出が必要とされています。
(注)この届出書は改定ではなく改訂を用いています。
以上
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