第237回「公租公課倍率法」
2024.06/12
経済レポート2963号[令和6年1月30日]掲載
- はじめに シリーズで、賃料を巡る評価をとり上げています。前回、不動産鑑定評価基準では、評価手法を新規賃料、継続賃料ごとに次のとおり定めていることにふれました。
- 公租公課倍率法
今回とりあげるこの公租公課倍率法は、不動産鑑定評価基準において、直接的には一言も言及されていません。ただ、簡便であることや大まかな賃料水準を把握することを目的に一つの目安として、実務上よく用いられることがあります。
公租公課倍率法は、次式のとおりであり、必要経費である公租公課に倍率の観点から着目した評価手法であるといえます。
- 倍率について
公租公課は、固定資産税と都市計画税の合計ですので、市町村が実際に賦課している額を計上します。したがって、この手法の決め手は倍率の決定如何にかかっています。
古くは、この手法は有効性が高いなどと評されることもありましたが、固定資産税の評価額自体の引上げや負担調整措置・軽減措置等がなされていることも多く、現在では相関関係も薄まっており、理論的根拠のある手法とはいえないのではないかとする見解もあります。
- 最後に
何倍が適正か?残念ながら、広島に関する確かなデータは存在しません。ただ、東京については、日税不動産鑑定士会や公益社団法人東京都不動産鑑定士協会が調査を行ったデータが有料販売されています。
余談ですが、寺社が貸し出す場合の地代は3倍以内が多いといわれています。これは、法人税法で3倍以下であると、収益事業に該当しない(収益性がない)として、非課税扱いとなることに起因しているといわれています。
以上
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