第243回「マンションの評価(その6)」
2024.12/13
経済レポート2987号[令和6年7月23日]掲載
- はじめに 相続税評価額と時価(市場売買価格)との乖離を利用したいわゆる「タワマン節税」は、令和4年4月19日最高裁判決が下される等注目をあつめました。こうしたなか、令和5年10月国税庁から、マンション評価の新通達(居住用の区分所有財産の評価について)が示され、令和6年1月1日以降に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価については、この新通達によって評価する取扱いに変更されています。
そこで、シリーズでマンションの評価をとり上げています。今回は、この新通達と「通達6項の適用の有無」について言及します。 - 財産評価基本通達6項とは
相続税の評価は、財産評価基本通達に沿った方法によって実施することが原則です。しかしながら財産評価基本通達6項に、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と例外規定が定められており、「著しく不適当」な場合に限り、通達以外の方法で評価する取扱いとなっています。
マンションについては、従来の通達に沿った評価額と時価と大きな乖離が生じているケースもあり、このような乖離があると、相続税の申告後に、国税当局から、通達6項による時価で評価し直して課税処分をされるというケースも発生していました。
この様な背景等から、新通達では時価の60%水準を評価の目処として見直しがなされているものです。 - 新通達と通達6項の適用の有無
それでは、今後はこの新通達によってマンションの評価を行っていれば、税務上は、万全なのでしょうか?これに対しては「居住用の区分所有財産の評価に関するQ&A(令和6年5月国税庁資産評価企画官)」では、「新通達によって評価を行っても通達6項の適用はある」としています。 - 最後に 続いて、このQ&Aには、マンションの評価に限らず、次の様な言及もあります。
「これまでも、地価の大幅な下落その他路線価等に反映されない事情が存することにより路線価等を基として評価基本通達の定めによって評価することが適当でないと認められる場合には、個別に課税時期における地価を鑑定評価その他の合理的な方法により算定することがあり、これと同様に、マンションの市場価格の大幅な下落その他本通達の定める評価方法に反映されない事情が存することにより、一室の区分所有権等に係る敷地利用権及び区分所有権の価額について、本通達及び評価基本通達の定める評価方法によって評価することが適当でないと認められる場合にも、個別に課税時期における時価を鑑定評価その他合理的な方法により算定することができます。」としています。
以上
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