コラム(詳細)

第250回「不動産レジリエンス」

2025.07/14

経済レポート3015号[令和7年2月25日]掲載

  1. はじめに  近年、様々な自然災害が多発する傾向にあり、被害を最小化し、災害後はその復旧をスムーズに行う等、災害に対する対応力が不動産に携わる者にとって重要な責務となっています。また、企業経営においても、BCP(事業継続計画)、ESGの観点や非財務情報の開示といったことから、災害に対する対応は重要なテーマともなっています。そこで、今回は、「不動産レジリエンス」をとり上げます。
  2. 不動産レジリエンスとは
     そもそも、レジリエンス(resilience)とは、脆弱性(vulnerability)の反対の概念とされており、「強靭力」「回復力」「弾性力」「復元力」といったニュアンスを持つ言葉とされています
     気候変動等に伴い、自然災害の多発化、激甚化さらには、地震の多い日本、台風等の急性リスクも課題であり、土地のみでなく、建物の頑強性や冗長性、災害発生時の即応性といった運営面にも配慮が求められます
  3. 認証制度
     不動産レジリエンスへの対応は、個々の不動産価格にも大きく影響を及ぼすと思われます。こうしたなか、まずは水害を対象として、レジリエンスを可視化して認証を行う「ResReal(レジリアル)」が令和5年1月にスタートしています。この認証制度は、個別の不動産の災害に対するレジリエンスをスコア化するものです。具体的には、「頑強性(立地・建物)」「冗長性」「即応性」「代替性」の4要素とともに、地域との連携といった取組みの先進性を考慮して評価するとしています
     今後は、水害だけでなく、高潮、地震・津波、土砂災害、噴火、猛暑といった項目にも順次拡張していくことが予定されています。
  4. 最後に この様な状況のなかで、一般の住宅についてもレジリエンスは注目されており、一般社団法人日本サステナブル建築協会が、平常時の「免疫力(健康被害や事故が起きにくくなっているか、省エネルギーな住まいと暮らしとなっているか等)」、災害発生時の「土壇場力(災害のリスクを把握しているか、自らの命を守る行動のための備えができているか等)」、災害後の「サバイバル力(災害後、インフラ等の地域の機能が回復するまで、また生活支援が得られるまでの数日間、自活可能な住まいとなっているか等)」の3つの観点と地域の方々と一緒に備える「連携力」さらには、健康リスクの切口も加えたうえで、住まいのレジリエンス度のチェックリスト(全42項目)を作成する等しています

以上

 

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