第25回「物件調査編その8(災害防止のための規制パート2)」
2006.04/25
経済レポート2109号[平成18年4月25日]掲載
今回は、災害防止のための規制の2回目です。「土砂災害防止法(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律)」についてとりあげます。
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概要
この法律は平成11年6月29日広島県に大被害をもたらした「6・29豪雨災害」を契機に平成13年4月に施行された法律です。土砂災害から国民の生命と身体を保護するため、土砂災害が発生する恐れがある土地の区域を明らかにし、警戒避難体制の整備や建築物の構造規制等のソフト対策を推進するものです。
対象となる土砂災害の種類は [1]急傾斜の崩壊(がけ崩れ)、[2]土石流、[3]地滑りです。都道府県が、土砂災害により被害を受けるおそれのある場所の地形や地質、土地の利用状況などを調査し、都道府県知事は、市町村長の意見を聞いた上で区域を指定します。 -
土砂災害警戒区域
土砂災害警戒区域は土砂災害のおそれがある区域(いわば黄色信号)であり、指定されると土砂災害から生命を守るため、災害情報の伝達や避難が早くできるように警戒避難体制の整備が図られます。
また、宅地・建物の売買または交換および賃借の契約にあたっては、「土砂災害警戒区域」内であるか否かの旨について、重要事項説明が義務づけられます。 -
土砂災害特別警戒区域
さらに危険な区域(いわば赤信号で、建物が破壊され、住民に著しい被害が生じるおそれがある区域)については、土砂災害特別警戒区域に指定され、次の規制を受けることとなります。
[1] 特定の開発行為に対する許可制
住宅宅地分譲や災害時要援護者関連施設の建築のための開発行為には、県知事の許可が必要となります。[2] 建築物の構造規制
居室を有する建築物を新築・増改築するには、想定される衝撃力に対して建築物の構造が安全であるかどうか建築確認が必要となります。[3] 建築物の移転
著しい損壊が生じるおそれがある建築物の所有者などに対し、県知事は移転等の勧告を行うことができます。[4] 宅地建物取引における措置
特定の開発行為では、都道府県知事の許可を受けた後でなければ、当該宅地の広告、売買契約の締結ができません。
対象物件が、特別警戒区域内にある場合は、「特定開発行為ならびにその変更の制限」が重要事項説明として義務づけられます。 -
その他
現在の指定状況については、県土木建築部砂防室、広島地域事務所建設局、市河川課、所管区役所区政振興課で閲覧できるとともに、ホームページでも公開されています。特に広島県土砂災害マップは、土砂災害危険箇所図等もあわせて掲載されており、参考になります。
広島県では、土砂災害警戒区域は1,871ヵ所、そのうち特別警戒区域は1,703ヵ所となっており、今後も調査を強化し、逐次指定を進めていくこととなっています。
以上