コラム(詳細)

第26回「物件調査編その9(まちづくり3法)」

2006.05/23

経済レポート2112号[平成18年5月23日]掲載

 接道義務をかわきりに物件調査をシリーズで掲載してきました。耐震偽装問題等もあり今後物件調査の重要性は増々高まっていくものと思われますが、紙面の都合もあり、今回で物件調査シリーズは最終回とします。
今まで主だった規制についてふれてきましたが、規制そのものも常に変動するものです。例えば都市再生で特区が認められたところでは地価の上昇が顕著であったり、用途規制や容積率の緩和などの影響によって不動産の利用価値が変わったり、様々なリスクやチャンスにさらされています。そこで今回はその一例として見直しが行われる「まちづくり3法」についてとりあげ物件調査編の締めくくりとします。

  1. まちづくり3法とは

    まちづくり3法とは、ゾーニング(土地の利用規制)を促進するための「都市計画法」、生活環境への影響など社会的規制の側面から大規模小売店出店の調整の仕組みを定めた「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」、空洞化する中心市街地の再活性化を支援する「中心市街地活性化法(中活法)」の総称です。
    中心部での出店規制やモータリゼーションの進展等を背景に郊外に進出した大型店舗。全体のパイが大きくなっていたバブル期までは、旧来の市街地にさほど深刻な影響を与えなかったものの、1990年代の停滞の時代には一気に地方あるいは地域の中心的な(旧来の)商業地域がさびれていくという状況に陥りました。

  2. 今回の改正

    今回改正されるのは都市計画法と中心市街地活性化法であり、都市計画法改正案では、現在は床面積1万m2超の大規模集客施設の出店が認められている六用途地域のうち、郊外大型店が多い「第二種住居」「準住居」「工業地域」には原則出店できなくなります。
    一方で、中心市街地活性化法改正案では、商業施設等を中心市街地に誘導する方策も盛り込まれており、郊外の土地利用の規制を強化する一方で、市街地への出店を優遇する等アメとムチで市街地の活性化を狙っています。政府は法改正によって都市機能を中心部に集める「コンパクトなまちづくり」を推進する構えです。

  3. 今後の流通業界の方向性

    主に大きな影響を受けるであろう流通業界では次の点が指摘されています。

    ・   平成19年の規制開始の前に駆け込み出店が増える。
    ・   既存の大型店の強化。
    ・   ショッピングセンターへのテナント出店を出店計画の柱としている企業は出店先の確保に苦労し、出店ペースが鈍化する。
    → テナントリーシング、賃料交渉では、売り手市場になる。
    ・   延べ床面積が1万m2以下の専門店にとっては追い風となる。
    ・   平家で大規模駐車場を備える店舗モデルは見直しを迫られる。(スーパーセンター等)
    ・   延べ床面積1万m2以下の近隣型ショッピングセンターの出店が加速する。
    ・   中心市街地の大型店舗のリニューアルが促進する。
     
    (取材協力   株式会社 成研様)

以上