コラム(詳細)

第171回「裁判所のなかの不動産鑑定…その2民事調停」

2018.12/13

経済レポート2697号[平成30年7月17日]掲載

  1. はじめに  裁判所では、不動産鑑定士の知見が活用される局面が多くあります。前回から、シリーズで裁判手続の類型ごとにとりあげています
    2回目の今回のテーマは、「民事調停」における不動産鑑定です。
  2. 民事調停とは 裁判所の民事紛争に関する代表的な解決方法として『民事訴訟』と『民事調停』があります。このうち、民事調停は、「当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ること」(民事調停法1条)を目的とするものであり、民事訴訟とは異なり、あくまでも裁判所の調停機関に間に入ってもらいながら、話し合いによって、お互いが譲り合って解決する手続であるため、必ずしも法律に縛られず、事案に即した納得のできる解決を図ることができるとされています。
    なお、民事調停は、①手続が簡易、②円満な解決ができる、③費用が安い、④手続が非公開で秘密が守られる等のメリットがあるといわれています。
  3. 調停委員会  民事調停は、原則として、調停主任(裁判官または民事調停官)1名と調停委員2名以上で構成する調停委員会によって進められます。当事者同士が同じテーブルで面と向かって話し合うのではなく、調停委員会が、交互に双方の話を聴き、中立的な立場で利害を調整し、ときには解決案を提示するなどして解決を図ります。
    調停委員は、調停に一般市民の良識を反映させるため、社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から最高裁判所によって選ばれています。民事調停委員は全国で9,895人(平成28年4月1日現在)。このうち筆者の推定ではおよそ1,000人程度が不動産鑑定士ではないかと思われ、不動産を巡る紛争事件で選任されています。(ちなみに広島簡易裁判所では調停委員のうち不動産鑑定士は4人です。)
  4. 民事調停と不動産鑑定  不動産鑑定との関わりがある民事調停の典型例としては、賃料増減額請求調停が挙げられます。賃料の改定を巡って、争いとなった場合に訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立をしなければなりません(民事調停法第24条の2。これを調停前置主義といいます。)これは、今後も契約関係を継続していくうえで、まずは当事者の話し合いで解決した方が良いとする考え方からです
    このような事案等においては、原則として、不動産鑑定士資格のある調停委員が調停委員のうちの1名として担当し、中立的立場で専門的知見をもって関与することとなります。調停委員会としては、適正な評価額(賃料額)等の見通しについて、相応の確度をもって両当事者の調整を図ることが可能となります

以上

参考文献:公益財団法人 日本調停協会連合会 HP
監修:弁護士法人 御堂筋法律事務所 広島事務所

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株式会社 小川不動産鑑定

代表取締役 小川 和夫
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