第184回「価格時点と鑑定評価書の有効期限」
2020.01/15
経済レポート2750号[令和元年8月27日]掲載
- はじめに 不動産の鑑定評価の基本的事項の1つに「価格時点」があります。これは、不動産の価格は時の経過により変動するものですから、不動産の評価額はその判定の基準となった日においてのみ妥当するものです。そこで、不動産の鑑定評価を行うにあたっては、不動産の価格の判定の基準日を確定する必要があり、この日を価格時点といいます。
例えば、価格時点を令和元年8月1日とすれば、この場合の鑑定評価額はこの日においてのみ妥当するものです。
ちなみに、国税(財産評価基本通達)の路線価は毎年1月1日、地価公示価格も毎年1月1日、都道府県地価調査価格は毎年7月1日を価格時点としています。
なお、賃料の価格時点は、賃料の算定の期間の収益性を反映するものとしてその期間の期首となります。
- 価格時点 価格時点が過去の場合(過去時点の鑑定評価といいます)は、対象不動産の確認等が可能であり、かつ、鑑定評価に必要な要因資料及び事例資料の収集が可能な場合に限り行うことができるとされています。
一方、将来の場合(将来時点の鑑定評価といいます)は、「想定又は予測することとなり、不確実にならざるを得ないので、原則として、このような鑑定評価は行うべきではない。ただし、特に必要がある場合において、鑑定評価上妥当性を欠くことがないと認められるときは将来の価格時点を設定することができるものとする。」とされています。 - 鑑定評価書(評価額)の有効期限 前述の国税(財産評価基本通達)の路線価では、1月1日を基準日として、毎年、評価が繰り返されています。(言い換えれば、評価の有効期限は1年です。)
一般に、価格時点との関連や鑑定評価書(評価額)の有効期限はどの様に考えればよいのでしょうか?筆者の経験では定まったものはなく、実務上は、ケースバイケースで運用されているのが実情ではないかと思います。しかしながら、価格時点と実際に鑑定評価書を利用する時点が長期間に至ってズレてしまうと問題となる可能性もあります。 - 最後に 鑑定評価書を取得後、何らかの事由で利用する時点が大きくズレ込んでしまった場合には、再度、鑑定評価書を取得し直すことが必要となりますが、場合によっては、「時点修正」や「再評価」で対応可能なこともあります。なお、固定資産税評価のように、時点修正を予定して設計されている制度もあります。固定資産税評価額は、3年間据え置きで、3年毎に評価見直しされますが、土地については、地価の下落傾向が見られる場合には簡易な方法により毎年の評価額を下落修正することができる特例措置が設けられており、その簡易な方法として時点修正が利用されています。
次回は、この時点修正と再評価を詳しくとり上げます。
以上
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