第187回「立退料の評価(その2)」
2020.04/17
経済レポート2762号[令和元年11月19日]掲載
- はじめに 前回からシリーズで建物(借家人)の立退料をとり上げています。前回は、立退料は正当事由を補完するものである等、立退料と正当事由の関係について言及しました。今回からはいよいよ具体的な算出方法です。
- 評価上の条件(取扱い) 前述のとおり、立退料は正当事由を補完するものですので、正当事由の強弱によって認められる範囲や金額が大きく異なります。一般に、不動産鑑定士では、その強弱の認定に困難性が伴うため、不動産鑑定士が評価を行う場合には、次の様な条件設定を行うことが実務上はよくあります。
- 立退料の構成内容 一般に立退料の構成内容は次のとおりとされています。
①は、引越費用、借家人が付加した内装・造作、移転雑費等。②は、営業補償等。③は借家権等が該当しますが、借家権については、認められるか否かが争点となる事案も多い様です。
- 最後に 不動産鑑定評価基準には、借家権については、その定めがありますが、借家人の立退料相当額に関しては定めがないこと、個別性も強いこと等から、不動産鑑定評価基準に関する実務指針(公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会策定)では、「個別性等によってはコンサルティング業務として対応すべきである」とされています。
立退料は、市場概念とは相容れない補償的な考え方が中心であり、特に店舗や工場の場合には個別性も強いことから、最も難しい評価ともいえます。
なお、公共事業の実施に伴って立退くケースでは、公共事業の補償基準の定めがありますので、これに拠ることとなります。【参考文献】
・借地借家・賃料実務研究会(平成26年3月)「Q&A 地代・家賃と借地借家」株式会社住宅新報社
・公益社団法人 福岡県不動産鑑定士協会(平成24年11月)「知って安心!不動産鑑定士のはなし」株式会社梓書院
・研究報告 借家権の鑑定評価に係る論点整理(令和元年6月)公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会鑑定評価基準委員会 借地・借家権評価小委員会策定
以上
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