第188回「立退料の評価(その3)」
2020.05/11
経済レポート2766号[令和元年12月17日]掲載
- はじめに シリーズで、建物(借家人)の立退料をとり上げています。前回までは、立退料と正当事由の関係、立退料の構成内容、評価上の取扱い等について言及しました。今回は、評価の手順とより詳細な補償項目です。
- 評価の手順 評価の手順について、統一化されたものはありませんが、筆者の場合ですと次の手順で評価を行っています。
- 公共用地の損失補償基準の補償項目 上記の公共用地の損失補償基準で、借家人に対して補償される項目には次のものがあります。
・借家人補償………家賃差額補償、一時金に係る補償
・工作物補償………借家人が付加した内装、造作、建物設備等について通常生じる
損失の補償
・営業休止補償……営業を休止しなければならない場合に通常生じる損失を補償
するものであり、その内容には、①収益減(所得減)の補償、
②固定的経費の補償、③従業員に対する休業補償、④得意先
喪失の補償、⑤商品、仕掛品等の減損の補償、⑥移転広告費
等の補償等がある。なお、代替物件による営業が不可能である
場合等には、営業廃止補償、仮営業の補償、営業規模縮小補
償となる場合がある。
・動産移転料補償…いわゆる引越し費用
・移転雑費補償……動産移転料、仮住居補償金等以外で、移転にあたって支出が
予想される費用を補償するものであり、その内容は、①移転先
選定費用、②法令上の手続き費用、③就業不能補償、④移転
通知費、移転旅費等の雑費がある。
- 最後に 営業補償については、借家人(店舗)の収益構造や決算内容、ビジネスモデル、マーケティング等についても調査・分析する必要があり、立退料は難易度が高い評価であるといわれる所以でもあります。
【参考文献】
・借地借家・賃料実務研究会(平成26年3月)「Q&A 地代・家賃と借地借家」株式会社住宅新報社
・公益社団法人 福岡県不動産鑑定士協会(平成24年11月)「知って安心!不動産鑑定士のはなし」株式会社梓書院
・研究報告 借家権の鑑定評価に係る論点整理(令和元年6月)公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会鑑定評価基準委員会 借地・借家権評価小委員会策定
以上
〒730-0013 広島市中区八丁堀7番2号
株式会社 小川不動産鑑定
代表取締役 小川 和夫
(不動産鑑定士)
TEL:(082)222-2253 FAX:(082)222-2254