コラム(詳細)

第207回「区分地上権(その2)」

2021.12/09

経済レポート2841号[令和3年7月20日]掲載

  1. はじめに(区分地上権)  駅構内を横断する自由通路や地下鉄等では区分地上権が設定されていることがあります。この区分地上権は、土地全体を利用するのではなく、空中又は地下の一定の範囲を区分して部分的に利用する権利です
     前回は区分地上権の概要をとり上げました。今回は、いよいよその評価手法に言及します。
  2. 区分地上権の評価手法
     不動産鑑定評価基準では、その評価手法を次のとおり定めています。

     区分地上権の鑑定評価額は、①設定事例等に基づく比準価格、②土地残余法に準じて求めた収益価格及び③区分地上権の立体利用率により求めた価格を関連づけて得た価格を標準とし、④区分地上権の設定事例等に基づく区分地上権割合により求めた価格を比較考量して決定するものとする。

     

    ①の設定事例等に基づく比準価格は、設定形態が類似している設定事例を基に比較検討を行って求める手法であり、「比較方式」であるといえます。
     ②の土地残余法に準じて求めた収益価格は、区分地上権の有無に伴う純収益の差額を還元利回りで還元して求めるもので「収益方式」であるといえます。
     ③の立体利用率により求める価格は、更地としての価格に、当該土地全体の立体利用率と当該区分地上権に係る立体利用率を乗じて得た額について、さらに当該区分地上権の契約内容等による修正を行って求めるものです。この手法は、土地の経済価値が立体利用の集積であることに着目し、区分地上権の設定に伴って立体利用がどの程度阻害されるのかを算定するもので「阻害率方式」であるといえます。(例えば8階建が最有効使用の場合に、その区分地上権が設定されることに伴って、4階建までしか建たないとなった場合、5~8階部分と上空の利用権が阻害されることとなります。)
     なお、この手法は、国税の財産評価基本通達や公共用地の損失補償基準にも用いられるなどしています。
     ④は、区分地上権の価格は、設定時に、よく「更地価格に対して〇%」といった割合でもって把握される傾向があることから、「設定割合の比較方式」であるといえます。

以上

 

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