第210回「農地評価…その1」
2022.03/11
経済レポート2853号[令和3年10月19日]掲載
- はじめに 前回、前々回とウッドショックに関連して、林地の評価に言及しました。そこで、今回から、農地の評価を取り上げます。農地は、鑑定評価基準上は、「農地地域とは、農業生産活動のうち耕作の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいう。農地とは、農地地域のうちにある土地をいう。」と定義されています。(農地法等において定義されている農地と必ずしも一致するものではありません。)
- 現行の制度
不動産の鑑定評価に関する法律は次のとおり規定しています。意外に思われるかもしれませんが、農地を農地として取引する場合の評価は、現行の制度では、不動産の鑑定評価に含まれない状態となっています。(農地を農地以外のものにする場合は除きます。)これは、昭和38年の法制定時には、農地を農地として取引する場合の価格は総じて安定的であり、宅地価格のような高騰や混乱はみられなかったことが背景としてあるようです。【不動産の鑑定評価に関する法律(昭和三十八年七月十六日法律第百五十二号】
(農地等に関する適用除外) 第五十二条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該評価等の行為は、この法律にいう不動産の鑑定評価に含まれないものとする。
一 農地、採草放牧地又は森林の取引価格(農地、採草放牧地及び森林以外のものとするための取引に係るものを除く。)を評価するとき。
- 農地の種類(区分) 公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会が平成30年3月に制定した実務指針では、自然的条件からみて、農地は次の4つに細分されるとしています。
田地 用水を利用して草本性植物を栽培する土地をいう。 畑地 用水を利用しないで草本性植物、苗木等を栽培する土地をいう。 樹園地 果樹等を集団的に栽培する土地をいう。 採草放牧地 養畜のために採草する土地(採草地)又は家畜を放牧する土地(放牧地)をいう。この場合、耕うん、整地、播種、灌漑、施肥、農薬散布、除草等を行っているか否かは、採草放牧地に該当するか否かの判断に影響を及ぼすものではない。
(注)
・用水を利用しているか否かが田地と畑地の判断基準であることから、陸稲が作付けされる地域は畑地であり、水田的形態でイグサ等を作付けしている地域は田地となります。
・採草放牧地は、農地法上は、農地以外の土地と定義されていますが、この実務指針では農地として取扱われています。また、国土交通省地価調査課監修の土地価格比準表では、「農地地域は、その地域特性により田地地域、畑地地域、果樹園地域等に区分されるが、農地価格比準表はとりあえず田地地域及び畑地地域について作成されている。」としています。
- 最後に
以上が、鑑定上の農地の種類ですが、税務上は、これと大きく異なった区分となっています。
固定資産税の評価上では、農地を「一般農地」、「宅地等介在農地」、「市街化区域農地」及び「勧告遊休農地」の4つ。また、財産評価基本通達では、「純農地」、「中間農地」、「市街地周辺農地」、「市街地農地」の4つに分類されており、それぞれ評価の取扱いが異なります。
これらは、農地については農地法等により宅地への転用が制限されていることや都市計画等により地価の事情が異なること等に起因しているともいえます。次回は具体的な評価を取り上げます。
以上
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