コラム(詳細)

第211回「農地評価…その2」

2022.04/18

経済レポート2857号[令和3年11月16日]掲載

  1. はじめに  前回は、農地の定義や評価上の区分について説明しました。今回はいよいよ具体的な評価を取り上げます。
  2. 農地の評価手法

    ①農地を農地以外のものとする場合
     不動産鑑定評価基準では、公共事業の用に供する土地の取得等、農地を農地以外のものとするために評価を求められる場合があるとし、この場合における評価を次のとおり定めています

     この場合における農地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。
     なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ずる損失の補償として農業補償が別途行われる場合があることに留意すべきである。


    ②農地を農地として使用することを前提とする場合
     この場合、不動産鑑定評価基準では、必ずしも詳細に定められていないため、これを補完するものとして、平成30年3月に公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会が「農地の鑑定評価に関する実務指針(以下、単に実務指針という)」を制定しています。

     この実務指針では、まず、農地を田地、畑地、樹園地、採草放牧地の4つに細分し、そのうえで、具体的な評価方法等に言及しています。(手法としては一般の評価と同様に、原価法、取引事例比較法、収益還元法の3手法を用います。)
  3. 縄伸び等 この実務指針では、農地の外、農地の利用権の評価や次の様な農地特有の事柄についても言及しています。

    【実務指針より】

     公図の縮尺が1200分の1又は3000分の1の農地は、中山間地の山林原野を開墾した開拓農地である場合が多く、この場合、登記地積と現況地積とが一致しないこと、即ち、縄伸び又は縄縮みがあることが多い。
     また、明治期の地祖改正に伴い作成された地籍図は、田地の畦畔を1筆に含んでいるが、地積には算入されていない。特に、傾斜地では、畦畔の割合が多くなるため、登記地積と現況地積との差が大きくなる傾向にある。
  4. 最後に
     宅地や林地と異なって、農地の個別地点の評価価格については、公表されているものがありません。
     具体の評価にあたっては、農業収益を査定する際に自家労働や経営者報酬をどう考慮するか、また、近年は、耕作放棄地(いわゆる荒廃農地)も多く、荒廃の程度をどの様に評価に反映させるかにも関心が集っています。

以上

 

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