第214回「心理的瑕疵…その3」
2022.07/15
経済レポート2869号[令和4年2月15日]掲載
- はじめに 令和3年10月、国交省が「宅建業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定・公表しました。人の死に関しては、取引等に際して、重要な影響を及ぼす可能性もあり、告知の判断基準を初めて示したものとして、注目されています。減価を要する場合には、「心理的瑕疵」として取り扱うことが多い様です。
前回は、「心理的瑕疵」を取り上げました。今回は、このガイドラインに言及します。
- 背景・経緯・適用範囲
不動産取引に当たって、過去の死に関して、告知ルール(判断基準)がなく、円滑な流通、安心できる取引が阻害されていると同時に、特に単身高齢者の入居の困難性が高まっているのではないかといった指摘を受けて策定に至ったものです。
ただ、このガイドラインは全てをカバーしているものではなく、次の点に注意が必要です。
・居住用不動産に限るものであること(オフィス等は対象外)
・トラブルの未然防止が期待されるとし、宅建業者が業務上負うべき義務の解釈について、現時点で一般的に妥当と考えられるものを整理していること(ガイドラインに従った対応を行ったとしても民事上の責任が回避できるものではないこと)
- 概要
(1)調査方法について
告知書等に記載を求めることで、通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとしています。原則として、自ら周辺住民に聞き込みを行う、インターネットで調査する等の自発的な調査を行う義務はありません。
(2)告知について
原則として、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、これを告げなければならないとし、次の場合は告げなくてよいとしています。
- 最後に
留意すべき事項として、亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はないとしています。
また、人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の取り扱い、搬送先の病院で死亡した場合の取り扱い、転落により死亡した場合における落下開始地点の取り扱い等、一般的に妥当と整理できるだけの裁判例等の蓄積がないものは、今後の事例の蓄積を踏まえて、ガイドラインの更新を検討すると同時に、現時点における一般的な基準であり、適時に見直しを行うことともされています。
以上
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