第216回「不動産の類型」
2022.09/21
経済レポート2878号[令和4年4月19日]掲載
- はじめに 不動産の鑑定上、不動産の地域性、有形的利用、権利関係の態様に応じた分析を行う必要があります。
不動産の種類には、種別と類型があり、前回は不動産の種別(用途に関して区分される分類)をとり上げました。今回は、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて区分される、不動産の類型をとり上げます。
- 宅地の類型
宅地の類型としては、鑑定上、次のものが例示されています。
・更地………建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の
付着していない宅地
・建付地……建物等の用に供されている敷地で建物等及びその敷地が
同一の所有者に属している宅地(建物の自用、賃貸を問いません)
・借地権……借地借家法(廃止前の借地法を含む)に基づく借地権(建物の
所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)
・底地……宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の
所有権
・区分地上権…工作物を所有するため、地下又は空間に上下の範囲を定
めて設定された地上権 - 建物及びその敷地の類型
建物及びその敷地の類型としては、鑑定上、次のものが例示されています。
・自用の建物及びその敷地……建物所有者とその敷地の所有者とが同一
人であり、その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない
場合における当該建物及びその敷地
・貸家及びその敷地……建物所有者とその敷地の所有者とが同一人で
あるが、建物が賃貸借に供されている場合における当該建物及びその
敷地
・借地権付建物……借地権を権原とする建物が存する場合における当該
建物及び借地権
・区分所有建物及びその敷地……建物の区分所有等に関する法律第2条
第3項に規定する専有部分並びに当該専有部分に係る同条第4項に
規定する共用部分の共有持分及び同条第6項に規定する敷地利用権
(いわゆる分譲マンションのことです) - 最後に
上記以外のものとしては、立退料、法定地上権、場所的利益、使用借権などがあげられます。これらは裁判上の評価を求められるケースも多くありますが、残念ながら、鑑定上は評価基準が定められていない現状にあります。
建物及びその敷地は土地と建物を一体として(複合不動産といいます)評価する類型ですが、税務上は、一体として(複合不動産として)評価する方法(考え方)は採用されていません。したがって土地と建物は別々に評価されることとなります。この様なことから税務上は、貸家建付地(貸家の用に供されている敷地)といった類型もあります。
なお、税務上の評価は、自用の価格から権利価格相当額を控除する(例えば、貸家の場合、借家権割合を控除する等)の評価方式が用いられ、実際の賃料水準が勘案されることもないため、場合によってはマーケット価格と大きく乖離が生じることもあり注意が必要です。(例えば、都心のオフィスビル等では低金利等を反映して、賃料の収益還元法による評価額が自用としての評価額を大きく上回り、この収益還元法による価格がマーケットプライスとなるケースもあります。また、立地条件や建物の老朽化、賃料の高低等に伴い逆のケースもありえます。)
以上
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株式会社 小川不動産鑑定
代表取締役 小川 和夫
(不動産鑑定士)
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