コラム(詳細)

第228回「社会的インパクト不動産」

2023.09/20

経済レポート2928号[令和5年5月9日]掲載

  1. はじめに  近年、ESG投資が拡大していくなかで、不動産へのESG投資は約12兆円にまで拡大しています。社会(Social)とともにある不動産には、今や社会的インパクトを創出する役割も求められています。
     今般、ESGのうち、社会的課題(S)に焦点を当てた実践ガイダンスが策定され、令和5年3月、国土交通省から、「社会的インパクト不動産」の実践ガイダンス(以下、単に「ガイダンス」といいます)として公表されました。今回は、このガイダンスをとり上げます。
    (注)社会的インパクトとは、取り組みの結果として最終的に生じた社会的な変化・効果のことを指します。
  2. ガイダンスの内容
     このガイダンスでは、「社会的インパクト不動産」の基本的考え方を整理するとともに、不動産に係る社会課題・取組を4段階14課題52項目に整理・類型化を行い、「社会的インパクト」の設定・事前評価の進め方等実践に向けたポイント等がまとめられています
  3. 社会的インパクト不動産の定義
     社会とともにある「不動産」には、企業等が中長期にわたる適切なマネジメントを通じて、ヒト、地域、地球の課題解決に取り組むことで、「社会的インパクト」を創出し、地球環境保全も含めた社会の価値創造に貢献するとともに、不動産の価値向上と企業の持続的成長を図ることが期待されているとし、このような不動産を「社会的インパクト不動産」と定義するとしています。
  4. 2つの対話
     次に、下記の2つの対話が不可欠であるとし、このガイダンスを用いることによって共通理解の醸成や関係者の目線を合わせる「共通言語化」を図り、対話の活性化に資するとしています。
    ・資金対話…企業等と投資家・金融機関との対話
    ・事業対話…企業等と利活用者・地域社会等との対話
  5. 最後に 今後は、社会的課題に対応した不動産に関するファンドの組成、評価・認証制度の充実・普及が期待されています。また、社会的インパクト不動産を明確化することによって、ポジティブな貢献を増幅させ、ネガティブな影響を低減させることも期待できるとしています。
     なお、このガイダンスには参考資料として多くの取組事業(実例)が掲載されており、県内の事例としては、「リノベーションまちづくり」として福山市の取組も紹介されています。

以上

 

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