コラム(詳細)

第229回「サイトビジット」

2023.10/12

経済レポート2931号[令和5年5月30日]掲載

  1. はじめに  近年、M&Aや事業承継が増加しています。そこで、今回は、閑話休題、いつもと違って現場の話を取り上げます。M&Aで一番の現場は、サイトビジットです。これは、M&A用語の一種で、工場や店舗、事務所等の現地視察のことをいい対象企業の実態等の把握を行うことを目的としています。
     なお、不動産鑑定評価基準では、「実地調査」という用語を用いています。
  2. 不動産評価における実地調査
     不動産鑑定評価基準では、対象不動産の内容を明瞭にしなければならないとし、対象不動産の確認は、「物的確認」及び「権利の態様の確認」に分けられ、実地調査、聴聞、公的資料の確認等により、的確に行う必要があるとしています

  3. サイトビジット
     M&A等におけるサイトビジットは、M&A成立前(非開示の段階)のDDの一環として行われているのが通例です。DDとはデューデリジェンスの略で、対象企業について詳細に調査する業務をいいます。その内容は、不動産だけではなく、事業性、財務、税務、法務、人事等にも及び、様々な専門家(プレイヤー)によって実施されています
     通常の不動産評価では、上記のとおり、まず、物的確認と権利の態様の確認後、価格形成要因の分析を行うこととなりますが、サイトビジット(M&A)においては(特に買手側の依頼の場合は)、加えて、諸リスク等の問題点の把握と気づき等の有効なアドバイスが求められます。特に昨今は、ESGやSDGsといった観点への配慮も重要であり、単に評価額を査定することのみに止まりません。なお、保有不動産のチェック等を実施することだけでも有益な場合があります。
  4. 最後に
     サイトビジットは、例えて、においを嗅ぎ取るといった緊張感でいっぱいです。稲盛和夫氏はフィロソフィの1つとして、「現場主義に徹する」をあげているなど、現場に関しては多くの名言があります。百聞は一見に如かずといったところでしょうか。今回は指向を変えて現場のお話しでした。

以上

 

〒730-0013  広島市中区八丁堀7番2号

株式会社 小川不動産鑑定

代表取締役 小川 和夫
(不動産鑑定士)

TEL:(082)222-2253  FAX:(082)222-2254