第230回「継続賃料」
2023.11/15
経済レポート2935号[令和5年6月27日]掲載
- はじめに 地代や家賃の改定を巡って争いがおこることがあります。争いとなった場合、どの様な基準で判断がなされるのでしょうか?最高裁の多くの判例は次の様に判示しており、現行の実務においては概ね確立された取扱いとなっています。
- 新規賃料と継続賃料
話の前提として、まず、賃料には次の2つがあります。
新規賃料は、今から新たに始まる契約ですので、基本的にはマーケットにおいて成立する(合意する)ものですから、通常は争いがおこる可能性はほとんどありません。
一方で、継続賃料は、既に契約関係に入っている特定の当事者間における賃料改定に係るものであることから、その増減を巡って争いがおこる可能性があります。バブル期におけるサブリースやオーダーリースを中心に多くの訴訟が提起され、その結果、上記の一連の最高裁判例が示されるに至っています。 - 判例のポイント(考え方)
上記の判例のポイント(考え方)は、まず、当事者が現実に合意した直近の賃料(直近合意賃料)を基とすること、そのうえで、経済的事由や諸般の事情に係る要因を総合的に考慮して、継続賃料を決定することです。
次回は、このうち、「直近合意賃料」について詳しく取りあげます。
- 最後に(調停前置主義)
賃料の改定を巡って、争いとなった場合、いきなり裁判を起こすことはできません。賃料の増減請求については、裁判の前に調停をしなくてはならない制度となっています。(これを調停前置主義といいます。)これは、今後も契約関係を継続していくうえで、当事者の話し合いで解決した方が良いとする考え方からです。
なお、調停では、原則として、不動産鑑定士資格のある調停委員が調停委員のうちの一名として担当し、中立的立場で専門的知見をもって関与することが、通例です。
以上
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(不動産鑑定士)
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